1年間

-2か月:ご飯のたびに妻のおなかを蹴っていた。

 

-1か月:夜中に足をバタバタさせて妻を起こしていた。

 

0か月:きみの眼は、魚の目のようだった。焦点はまったくあわず、部屋の灯りをぼんやりと見つていた。目が見える幸運に感謝した。

 

1か月:人の顔に時たま反応を見せた。焦点が合っている瞬間があるような気がする。相変わらず灯りに興味があるようだった。おそらく明暗以外はほとんどわかってないのではないだろうか。

 

2か月:ぼくの顔をはっきりと認識しているが、上下さかさまだったり、遠かったりすると認知できない。

 

3か月:アンパンマンのような記号的な顔も顔と認識できるけれど、横顔は認識できない。妻とぼくの顔は、おそらく区別している。

 

4か月:回転対称、拡大縮小(遠近)について、頑強な顔認識システムができあがった。キャラクターも目のサイズ依存だが、認識できる範囲が広くなった。しかし、ぼくが後ろを向くと「居なくなった」と思っている様子。

 

5か月:なんにでも人の顔を発見している気がする。レジャーシートに描かれるキウイフルーツの断面の絵を人の顔だと思っていまいか。じっと見ている。ぼくらのことは横顔でもわかっているね。

 

6か月:個体識別能力が加速した。保育園で保育者ごとに反応が変わる。マスクをした親を親と認知できている可能性がある(声に反応しているだけかもしれない)。「魚の目」をほとんどしなくなった。授乳中に時折みせる「魚の目」になつかしさを感じる。

 

7か月:テレビのキャラクターごとにも十分異なる反応をするようになった。子供向けキャラクターが、ずっと正面を向いている意味が分かった気がする。後ろを向いたぬいぐるみに興味をもつことはできないが、ずっと集中した状態でクックルンを最初から最後まで見終えた。Eテレは偉大だ。

 

8か月:立った。マスクをした親を、遠目で認知した。迎えにいくと喜ばれることが増えた。ぼくがする「いないいないばあ」が大のお気に入りだが、変顔が好きなだけな気もする。気が付くと、親が後ろを向くだけで泣くことはほぼなくなっていた。後ろを向いて遠ざかると嫌がる。話してる最中にそれをやられたら、大人だって嫌だよね。

 

9か月:レジャーシートに描かれているキウイフルーツに反応することは無くなった。スマートフォン越しでビデオ会話する叔母に自分のキメ技を披露できる。後ろを向いたぬいぐるみを意図的に掴みとる。ぼくがやる「いないいないばあ」には飽きてきた。

 

かけがえのない1年間をどうもありがとう。