授かりました

職業柄か,日本がそもそもそういう国だからか,
ぼくの周囲にはたいへん高齢出産が多い.
仕事仲間で,何らかの障害を持つ子を育てているケースが少なくない.
そういった事例をそばで見ながら,妊娠に際して,
ぼくは出生前診断をやる気が満々であった.
妻もそうだった.

妻が妊娠検査薬で陽性であると分かった時,
お互いにこの考えは変わらなかった.
出生前診断の種類と妻の肉体へのリスク,
その予測精度を調べたりもした.


その後,産婦人科で子宮内をエコーで撮影した写真・動画を見た.
まるい何かが拍動を刻んでいた.いわゆる胎芽である.


産婦人科からの帰り道,ぼくと妻の頭の中から「出生前診断をやる」という考えが消えてしまったのに気が付いた.
それどころか,もしも出生前診断を行い,子供に何らかの疾患リスクが高かったとして,堕胎するという選択肢を取るならば,
ぼくたちは深く悲しむだろうという確信さえあった.


この心の動きを何と呼ぶべきだろうか?