人間の社会性の起源

ルソーは「人間不平等起源論」で,
人間の社会性の起源は「憐み」であると記した.
具体的には「獰猛な肉食獣が母親の胸から子供を引き離すのを目撃する囚人の心に去来する感情」である.

孟子」には
「忍びざる心」が「仁」の起源であると記されている.
具体的には「いけにえに差し出される牛を目の当たりにして哀れに感じ,目の前には存在しない羊を牛の代わりに使えと指示する君主」「井戸に落ちそうになった子供を目撃した時に,誰もが感じる惻隠のこころ」といった例で説明される.

ハンス・ヨナスは「責任という原理」で,
生まれたばかりの乳飲み子の鳴き声を聞いたときにその呼び声に反応してしまうことを責任の起源とした.


いずれのケースも「うっかり目撃して/聞いてしまった」ために,「否応なしの反応」が心に生じてしまう.



妻の体内で拍動する胎芽のエコー画像を見た,
わたしの心に生じたものは,
そういった古代から人類が経験してきた何かに類するものであろうと推察される.